目次

1．はじめに：5G整備の裏で求められる“電気工事のプロ”

2．5Gインフラ導入の現状と技術要件

3．電気工事業者に求められる新しいスキルセット

4．施工現場で直面する課題と技術的ハードル

5．ローカル5G・プライベート5Gの普及と工事ニーズ

6．中小の電気工事会社が生き残るための戦略

7．5G整備と環境・規制の観点：設置・メンテナンスの注意点

8．まとめ：5G時代、「通信インフラの土台」としての電気工事の価値

1. はじめに：5G整備の裏で求められる“電気工事のプロ”

5Gの商用展開が進む中、私たちが普段使うスマホやモバイル通信だけでなく、
ビル・オフィス・工場などの「建物・施設のインフラ基盤」としても5Gは欠かせません。

5G基地局の設置、小型基地局の屋内・屋外設置、電源・通信配線の構築──
これらはすべて“電気工事の現場”が動くことで成立します。

つまり、5G整備は「通信キャリア」だけの話ではなく、
“電気工事会社の技術力と行動力”も強く問われるインフラ整備です。

本記事では、5G導入によって変わる電気工事の現場、そしてそこで求められるスキルや課題に焦点を当てます。

2. 5Gインフラ導入の現状と技術要件

5G普及の鍵は、多くの小規模基地局の設置と、高速かつ大容量なバックホール回線の整備です。 

• 既存の大規模基地局だけでは補えない、都市部・住宅密集地などの5Gカバレッジ。

• 各基地局へは高速なバックホール（光ファイバー or 高速回線）が必要。

• 基地局には安定した電源と通信機器の設置、高所作業、屋外耐候性機材の取り扱い。

これら要件を満たすには、ただの「配線屋」ではなく、電気工事の知識・無線基地局の施工ノウハウ・安全管理能力 が不可欠です。

また、5G基地局だけでなく、屋内向け小型基地局（インビル）や、企業内で使うプライベート5G／ローカル5Gの導入も進んでおり、電気＋通信の両輪のスキルが求められています。 se.com+1

3. 電気工事業者に求められる新しいスキルセット

従来の「ブレーカー・配線・照明・コンセント」設置に加え、5G時代には以下のようなスキルが必要です。

• 通信インフラの構造・仕様理解（光ファイバー敷設、通信機器の動作環境）

• 屋外高所作業・耐候性設備の設置経験

• 基地局の電源設計と安定供給の知識（停電対応、電力管理）

• 通信設備の調整・試験（電波の強さ、バックホール回線の安定性、ノイズ対策）

• 建築・都市インフラとの調整力（マンション、ビル、電柱、街路灯など 多様な設置環境）

このように、“電気工事 + 通信工事 + 現場調整力” を兼ね備えることが重要です。

また、技能者の人数や経験によっては、施工できる物件や対応範囲に大きな差が出てきます。

4. 施工現場で直面する課題と技術的ハードル

5Gインフラ施工では、単なる“配線”以上のハードルがあります。

▸ 高密度で多数の基地局が必要

特に高周波帯を使う5Gでは、カバレッジが限定されやすく、都市部では小型基地局を多数設置する必要があります。これには多くの“電気＋通信”の現場が同時に動くことになります。 

▸ バックホール回線の整備負荷

5G基地局は光ファイバーなど高速回線とつなぐ必要があるため、既存の配管・ダクトの容量不足、経路不明、強度・耐候性の問題が起こりやすい。古い建物やインフラが整っていない地域では設置困難なケースもあります。

▸ 電源・消費電力管理の重要性

多数の基地局が稼働すると、電力需要が増加。基地局ごとに安定した電源・バックアップ体制が求められます。特に停電や災害時の対応は重要。

▸ 規制・許可手続き・周辺環境対応の手間

街灯や電柱、建物屋上など、設置場所の制限、許可手続き、近隣住民への配慮などが必要。自治体やビル管理者との調整に時間がかかることも多く、施工スケジュールに余裕が必要です。 

5. ローカル5G・プライベート5Gの普及と工事ニーズ

近年、企業・工場・施設内で利用する「プライベート5G／ローカル5G」 の導入が進んでいます。
これにより

• 工場のIoT化・自動化（センサー、ロボット、機械制御）

• 倉庫や物流施設でのリアルタイム管理・追跡

• 建物全体のネットワーク統合（通信／電力／セキュリティ）

など、新たな“電気＋通信”工事のニーズが生まれています。

プライベート5Gでは、基地局の設置、屋内中継、ケーブル・電源整備、配線経路の確保など、一般オフィスや住宅にはない施工要求があるため、工事会社の対応力が問われる現場になります。

6. 中小の電気工事会社が生き残るための戦略

全国的に5Gインフラの整備は進みつつありますが、施工体制の整備・人材の確保が追いついていないのが現状です。

小規模・地域密着型の電気工事会社が生き残るには、以下のような戦略が現実的です。

• 電気工事 + 通信工事の両輪を訴求。LAN／光配線／5G基地局／IoT設備などワンストップ提案。

• プライベート5G／ローカル5Gの導入支援に特化：工場・倉庫などのニーズに特化することで差別化。

• 既存インフラの再利用と提案力：古いビルや商業施設で、設備更新と通信インフラ整備をセットで提案。

• 安全管理・高所作業・メンテナンス体制の強化：高度な作業やアフターにも対応できる体制づくり。

• 自治体・ビルオーナーとの関係構築：5G基地局や中継局設置のための許可交渉や近隣調整も業務に。

このように、単なる“電気屋”ではなく、通信インフラの構築パートナーとして価値を高めることが重要です。

7. 5G整備と環境・規制の観点：設置・メンテナンスの注意点

5G基地局や小型セルを多数設置するには、環境や規制面での配慮も欠かせません。

• 高周波数帯の5Gは、建物や樹木、雨風などによって電波干渉・減衰が起こりやすい。設置場所・方角・機器の耐候性・固定方法に配慮が必要。

• 電力消費が多いため、エネルギー効率の良い機器、バックアップ電源、消費電力管理などが重要。

• 設置に伴う許可申請、道路使用、景観配慮、近隣住民との調整など社会的な責任が発生。これに対応できる体制が必要。

• 将来的な機器更新や保守を見据えた設計。特に屋外・屋上設置は、劣化・更新を見越す必要あり。

これらの要素は、単なる電気配線ではカバーしきれない“設計力・マネジメント力”を要求します。

8. まとめ：5G時代、「通信インフラの土台」としての電気工事の価値

5Gは、スマホだけの話ではなく、都市インフラ、ビル・施設、工場、物流拠点すべてを変える通信インフラです。
そして、その裏で支えるのが、 “電気工事 + 通信工事 + 現場対応力” を備えた電気工事業者です。

これまでの「照明・コンセント・ブレーカー工事」だけでなく、
「基地局設置」「光・電力・通信の統合」「IoT／スマート設備の導入」まで視野に入れることで、
電気工事会社は新しい時代の主役になれます。

特に中小・地域密着の業者にとって、今は “伸び代”と“差別化のチャンス”。
5G整備に対応した体制とノウハウを備えることで、これからのインフラ需要を支える“なくてはならない存在”となるでしょう。